「汗」
俺は、「綺麗」だと思ったことがなかった。
人にしても、風景にしても、物にしても。
「すごいな」
とは思うものの、心から綺麗だって思えなかった。
今日、この時までは。そう思ってた。
「ふー」
「あっついね」
いつも通り。
修行して、ドロドロになって、水浴びたみたいに汗かいて。
ただ、それだけのことなのに。
ゴンから流れる粒が、キレイだって思った。
光を反射して眩しいと思った。
「・・・あついな」
「さて、と」
「そろそろいこっか、キルア」
「おう」
ポタッ
「行こう」
そう言って、手を伸ばしてきたゴンの手から
汗がポタリと俺の腕に落ちた。
ぽつりと一粒
落ちて
俺の腕に触れて
染み込んで
(・・・・・・う、うわぁ)
前の方で「行かないの?」
そういうゴンの声が聞こえた。
俺は、はっとして、ゴンの手をぎゅっと握って起き上った。
「さて、行くか」
「うん」
起き上った俺はゴンより先に歩きだした。
そう言った、俺はゴンの顔をまともに見れなかった。